#2 諸行無常

諸行無常。この世の万物は移ろい変わり、ひとときとしてとどまるものはないという、仏教の根本的な教えです。

一秒前と後で同じものはない、というのは至極当然ことなのですが、あらゆるものがシステム化されている日本で育つと、この前提をついつい見過ごしてしまいます。

例えば、コンビニは24時間開いていて、いつでも食べ物や日用品が手に入ると思ってみたり。そこで売っているアイスクリームは期待通りの同じ味だとイメージしながら購入したり。アイスクリームを冷やす冷蔵庫の電源はいつも滞りなく供給されることを毎日疑わなかったり……。

でも、本当にこれって当たり前のことなのでしょうか?

近年、気候変動の影響か、日本でも大雨が続いたり、大型の台風が発生したりして停電することがあります。また、コロナウイルスなどの世界的な病気が流行ると物流・人流に影響し、貿易の仕組みそのものが揺らぎます。

その結果、アイスクリームが冷やせなかったり、原料の牛乳や砂糖、カカオ・バニラの供給が滞ったり……いつも当たり前にそこに同じものがある、という状況がいかに恵まれていることなのかを認識しますね。

スリランカとの貿易をしていると、この言葉がしみじみと脳裏に浮かびます。

雨季では、毎日のように停電をしていたスリランカ。
インターネットは突如使えなくなり、担当者との連絡が途絶えたり、納期が途方もないほどに遅れたり。また、対応策として人々が伝言ゲームのように電話で連絡しながらアナログで頑張った結果なのか(!?)、こちらが発注したのと異なるものが紛れ込んでいることも……。

いつも同じものが同じ時間、同じ場所にトラブルなく納品されることが日常の日本とは、大違いです。

人は当たり前ではないことが起こった時に、驚きや戸惑い、悲しみ、怒りなどの負の感情が起こりがち。日本での当たり前を想定して、スリランカでの生活や貿易をしていると、きっと感情の起伏が追い付きません(笑)。

そんなときに、諸行無常、いつも同じはない、という前提に立ち返ると、ふっと違う視点で物事を考えることができます。

コロナウイルスのなかで、インフラや経済が不安定なスリランカと貿易ができること自体に感謝だなぁ、とか。

きっと今日も停電しているにも関わらず、現地ではベストを尽くして日本に商品を届けようとしてくれるんだろうなぁ、とか。

諸行無常を意識すると、ないものに不満を抱くのではなく、今あることへの感謝や尊さ、嬉しさというポジティブな気持ちが湧いてきます。不思議ですね。

さてさて、今、この瞬間も、万物は移り変わっています!

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