アーユールヴェーダ#2  食事というパートナー:「6つの味」とは?

アーユールヴェーダ#2  食事というパートナー:「6つの味」とは?

 「免疫力を高めるレシピ」や「発酵食品」など、コロナ禍を経て私たちの日々の食事が改めて注目されていますね。食べることは単なる栄養補給にとどまらず、私たちの生活や心に深く結びついた行為です。

ダイエット、美容、健康、病気の予防──
食事は生活習慣そのものを形作る大切な要素であり、時には大切な人と過ごすひとときを演出するもの。味や香りといった五感を刺激し、人生に彩りを添えてくれる、かけがえのない“パートナー”と呼べるかもしれません。

ところで、「食事のバランス」という言葉。
よく耳にしますが、バランスの良い食事とは何を指すのでしょう?カロリーや栄養素、主菜と副菜の配分などが一般的な答えかもしれません。今回のテーマ、アーユルヴェーダの領域では、「6つの味」の調和を保つことを意味しています。

 

6つの味がもたらす調和

アーユルヴェーダでいう「6つの味」とは、甘味、酸味、塩味、辛味、渋味、苦味のこと。それぞれが体や心に異なる影響を与えます。

甘味

蜂蜜や穀物、根菜、ココナッツなどに含まれ、体を労り、心を落ち着かせます。幸福感を増す一方で、摂りすぎるとむくみや冷えの原因になることも。
▶蜂蜜・精製していない砂糖、穀物(米・小麦など)、牛乳、芋・根菜類、甘みの強い果物、ココナッツ

酸味

柑橘類や酢、発酵乳製品に豊富で、食欲を増進し体を温めます。知性を保つ働きがあるとされますが、過剰摂取は肌荒れや消化不良のもとになります。
▶柑橘類(レモン・みかんなど)、お酢、梅干し、発酵乳製品(ヨーグルト・チーズ)、アルコール類、醤油

塩味

塩や海藻類が代表的。少量でエネルギーを増やす一方、過剰な塩分は高血圧や老化の原因になります。
▶塩(精製されていない天然のもの)、海藻類(ひじき、わかめ、昆布)

辛味

生姜や唐辛子、スパイス類に含まれ、代謝を促進し、体をデトックスします。ただし摂りすぎると、炎症やイライラの原因に。
▶生姜、ネギ類(にんにく・玉ねぎなど)、唐辛子、スパイス(黒胡椒・カルダモン・カレーリーフ、クミン)

渋味

豆類やお茶、蕎麦などに含まれ、消化を助け炎症を抑えます。過剰な摂取は便秘や血行不良を招くことがあります。
▶豆類、お茶類(コーヒー・紅茶・緑茶)、蕎麦、渋味の強い果物(クランベリーやドライフルーツ)

苦味

山菜や葉物野菜、ゴーヤなどに豊富で、デトックス作用や肝臓の健康をサポートします。しかし摂りすぎると、疲労感やめまいの原因になる場合があります。
▶山菜(春の山菜)、葉物野菜、ゴーヤ、スパイス(ターメリック、フェヌグリーク)、苦味の強い果物(グレープフルーツなど)


 

スリランカカレーは6つの味の宝庫

この6つの味をバランスよく摂ることで、心身の調和を保つのがアーユルヴェーダの食事法。アーユルヴェーダの教えが息づくスリランカで食べられるカレーは、6つの味を自然に取り入れることができる、まさに理想的な一皿!

画像は、アムリタで不定休で提供しているランチのスリランカカレープレート。
異なるスパイスの香りに包まれながら、一口ごとに心と体が整えられる感覚を味わえます。そういえば、店主が現地に滞在していたときにも、スリランカの人々がこだわっていたのはそれぞれのカレーと副菜の組み合わせ。

「これとこれは相性がいいね」
「今日はジャガイモの汁カレーだから、副菜はココナッツの和え物だね」

今でも、そんな現地の人との会話を思い出しながら、ランチのプレートに並ぶお野菜の組み合わせを考えて作っています。

自分に合った食事を見つけるために

そして、食事のバランスを考えるとき、重要なのは6つの味だけではありません。
アーユルヴェーダでは、各自の体質に合わせた食事が推奨されています。それは、「私たちの体は唯一無二の存在であり、必要なものも人それぞれ異なる」という考え方に基づいているから。仏教で言う「待機説法*」ですね。

次回は、アーユルヴェーダにおける体質診断の基本について触れていきます。自分の体に合った食事を探す旅、ぜひ一緒に進めていきましょう!


*待機説法(たいきせっぽう)
仏教において、聞き手の状況や能力、性格(心の状態)、時期などに応じて適切な教えを説くことを指します。
これは、仏や菩薩が人々を悟りへ導くために、その人に合った最適な方法で教えを説くという仏教の重要な教義の一つです。特に大乗仏教で重視される概念です。

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